富士山が世界遺産に選ばれたわけ
絵画に見る富士山 / 富士山と信仰
古の富士山が崇められたのは、その孤高の美しさだけでなく、
荒ぶる噴火により神の住む山と信じられたからです。噴火が収まると富士山詣が大衆に広がります。
その役割を果たしたひとつが、曼荼羅図を中心とした絵画でした。
代表的な作品をご紹介します。(クリックすると詳細をご覧いただけます)
富士参詣曼荼羅図
元信 印 / 室町時代(16世紀)
富士山信仰の象徴的な作品で、当時の登拝の様子を見事なタッチで今に伝えています。画面下には清見ヶ関、清見寺、田子の浦から三保の松原、その上に浅間大社の境内には水垢離する行者がいて、最上部に描かれた富士山は神々しい。精細かつ的確な描写で、富士山と信仰の関わりを映す象徴的な作品です。
- 富士山本宮浅間大社 蔵
芙蓉峯細見之図
墨江武禅 筆 / 寛政十一年(1799年)頃
作者である墨江武禅が実際に富士登山を行い、その際の見聞を絵にした作品といわれています。登山道は簡略化されているのに、頂上付近の描写はきめ細かいというユニークな作風が特徴です。今でいう観光ガイドマップのように地形の様子や距離、その土地に伝わる話しなども文字で記されています。
- 静岡県立美術館 蔵
富士山登龍図
狩野永岳 筆 / 嘉永五年(1852年)
富士山に棲む神龍をイメージした、繊細にして迫力のある筆遣いが見事。富士山登龍図は数多く描かれていますが、中でも最大級のサイズを誇ります。龍の動きのある描写、何かを予言するかのような不穏な雲行きは、富士山に対する畏れでしょうか。実はこの大作、井伊直弼の御前で描かれた即興画というから驚きです。
- 静岡県立美術館 蔵
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